診断名がついても<br>自分自身は変わらない

吉冨 晃太朗さん

JSN門真】を経て就職 就労継続支援B型事業所 ブーケトス
職業指導員

診断名がついても
自分自身は変わらない

就職し、働き続けるOBたちの声は、現役訓練生の大きなモチベーションとなるだけでなく、支援するスタッフにも希望と勇気を与えてくれます。
今回ご登場いただく吉冨さんは、自らも福祉の道を希望。現在は職業指導員として活躍しておられます。当事者ならではの細やかな視点と、さりげないフォローで、利用者さんからも共に働く仲間からも、とても頼りにされています。

コロナ禍でのJSN入所
訓練生仲間との絆

-’21年の6月に【JSN門真】に入所。’22年9月にはこちらで実習を開始し、その後、トライアル雇用を経て’23年3月より職業指導員として入職されています。

実習を始めた頃は、当事業所もオープンして間がなく、利用者さんは3名だけでした。今では33名が通所されています。

-ちょうど実習を開始された頃から、業務が忙しくなってきたのでは?

はい。年末には利用者さんがどんどん増えてきて、僕もトライアル雇用に移行することになりました。社長からはトライアル期間中から「正式に入職してほしい」とお話をいただいていました。

-すでに戦力として期待されていたのですね。【JSN門真】入所した頃から、就職という目標は明確に見えていましたか?

そうですね。入所前に計画相談の方から就労移行支援事業所の存在を教えてもらい、入所を希望しました。前職を退職してから2年ほど引きこもっており、「そろそろ働きたいな」と考えていました。何ヶ所か紹介していただいた中で、一番自宅から近かったのが【JSN門真】でした。

-【JSN門真】の印象はいかがでしたか?

「めっちゃ配慮をしてくれるんやなぁ」と思いました。「最初の1週間は半日だけの通所にしようか?」などと提案して下さり、僕は最初からフルタイムで通所するつもりだったので、ちょっとびっくりしました。ただ、今だからわかるのは、いきなりフルタイムは辛い人もいるだろうな・・・と。結果、自分も最初の何週間かは半日の通所からスタートしました。

-半日からフルタイムへ移行する時はスムーズでしたか?

苦ではなかったです。ちょうどコロナの時で、フルタイムでも時間が短かったんですよ。

-コロナ禍での戸惑いはありませんでしたか?

特にありませんでした。所内作業にもすぐに馴染めたと思います。ただ、他の訓練生は自分の作業が終わると、座って待っていることが気になりました。「なんで手伝わないんやろう?」と思ったので、まずは自分から率先して声を掛けて、周りを手伝うようにしました。そうするとだんだん、皆も作業が終わった後、まだ終わっていない人を手伝うようになってきました。

-今の職業指導員というお仕事につながるエピソードです。

そうやって周りと関わっていくことが、楽しかったです。今でも当時の訓練生仲間とは連絡を取り合っています。訓練生時代はコロナ禍でレクリエーションなどが少なかったため、逆に横のつながりが強くなったように思います。年齢層もバラバラなんですが、仲の良い仲間が9名ほどいます。

福祉系の実習を希望
得意と苦手に気付く

-所内訓練の後は実習、というのが【JSN】の流れですが、実習中の思い出はありますか?

1ヶ所目は工場でのリネンクリーニングの仕事を1ヶ月間経験することになりました。僕は前職が工場の仕事だったので、正直「工場はもういいかなぁ」と思っていたんです。「次からはちゃんと希望を伝えなくては」と思いました(笑)。

-実際に行ってみて、どうでしたか?

【JSN門真】で担当スタッフだった内田さんからは、「とりあえず行ってみよう。会社側からの評価もほしいから、一回行ってみて」と言われ、「なるほどな」と思いました。「言われた以上の仕事はしたい」という気持ちで向き合いました。一緒に実習に行っていた訓練生は、どんどん勤務時間が減っていくんですよ。なのに僕は、どんどん時間が増えていく・・・(笑)。

-吉冨さんは「どこに行ってもしっかり仕事をされる方」とスタッフから聞いています。

どんな実習生が来るかわからないので、実習先の企業さんも不安だと思うんですよ。だから迷惑かけたくないな、という気持ちが強かったです。2週目からはほぼフルタイムで通っていました。

-2ヶ所目の実習先は、ご自身の希望を伝えましたか?

そうですね。母親が介護の仕事に携わっていたので、福祉の仕事に興味がありました。ただ、当時はコロナ禍で実習先を探してくるのは大変だったと思います。内田さんがB型事業所の実習を見つけて下さり、1ヶ月間通いました。

-初めての業種で、何か発見はありましたか?

この業種は利用者さんの送迎が必須なので、車の免許がない僕は難しいかな?と感じました。あと、利用者さんへの支援はやりがいを感じたのですが、事務関連の仕事がとても苦手だと気付きました。その次の実習先は介護の仕事を希望して行かせていただいたのですが、B型の仕事の方が楽しかったです。

目配りを忘れず
苦手な作業とも向き合う

-そして4ヶ所目の実習先がこちらです。

当事業所の所長は元【JSN】の所長である堀川さん。僕は当時は面識がなかったのですが、そのご縁もあり、紹介していただきました。1ヶ所目のB型事業所とは全然雰囲気が違いました。知的・精神・身体とさまざまな障害の方が通っておられ、利用者さんの数もどんどん増えていく。人が足りておらず、「やらなしゃあない!」という状況で鍛えられました。それでも利用者さんと話すことがとても楽しかったです。

-利用者さんと接する時に心がけていることは?

言葉遣いに気を付け、わからないことは「わからないので堀川所長に聞いて」と正直に伝えるようにしています。また、利用者さんが作業しやすい雰囲気づくりを心がけています。お店で手がけているフラワーアレンジメントに関しては、専門の先生が来て教えてくれます。なので、僕らの役割はそれ以外のところの目配り。しんどそうにしているなぁと思ったら、すぐに声を掛けるなど、フランクに接するようにしています。

-利用者さん対応以外にも、さまざまな仕事を担当しておられます。

苦手なパソコン作業とも向き合っています。徐々に堀川所長の仕事を手伝うようになりましたし、お弁当の発注や、得意先とのやりとりも担当しています。たぶん僕、めっちゃミスしていると思うんですよ。それを堀川所長は陰で全部修正してくれて、手柄だけ僕のものにしてくれる。優しいなぁと感じています。

-後輩を指導する立場も担っておられます。

マニュアルのない仕事なので、やり方を見せて、コツを教えるようにしています。一度自分で考えてやってもらって、後でフォローする。自分でやり方を模索して仕事を覚えていってもらえればと思います。

-どんな時に仕事のやりがいを感じますか?

毎日がとても忙しいので、一日が早く感じます。暇な方が苦手なんです。自分の都合で休むとかは、考えたこともありません。ただ、僕自身はまだまだ甘いところだらけだと感じています。面談の際の言葉の引き出し方など、先輩の支援員さんと情報共有をしながら、スキルを磨いていきたいです。

診断名がついても
自分自身は変わらない

-【JSN】のスタッフから、「吉冨さんはジョブコーチ支援がほとんど必要ないほど、安定して働いている」と聞いています。

むしろあまり来てほしくないです(笑)。作業が止まってしまうとしんどいんです。

-吉冨さんご自身の障害について、少し教えていただいても構いませんか?

【JSN】に通所する前の2年間、引きこもっていた時期に知的障害があることがわかりました。前職を辞めて実家に帰ってきた時に、家族から「ちょっとおかしいで」と言われ、1年ほどした頃に家族の勧めで受診しました。障害を受け入れられない、ということはなかったのですが、「なんでなんだろう?」という気持ちはありました。

-【JSN】では障害をオープンにして働くことが前提となっていますが、抵抗はありませんでしたか?

引きこもっていた時期に自分で求職活動をしたこともあったのですが、コロナ禍ということもあり、面接で落ちてしまったり、せっかく決まった就職先が倒産してしまうことがありました。通院先の先生から「コロナ禍では就職自体が難しい。障害者手帳を取って障害をオープンにして挑戦してみてはどうか?」と提案されました。診断名がついても自分自身は変わらないし、「そうなんや」というかんじ。手帳を取得してから就職までを振り返ると、早かったな、という印象です。

-自分が支援する立場になり、気付いたことはありますか?

【JSN】での訓練生時代に、スタッフさんには色々無茶を言っていたなぁと思いました。コロナ禍なのに僕が希望した実習先を探して下さったり、いつも応援してもらっていたんだと実感しています。それなのに訓練生はスタッフさんに文句を言い過ぎです(笑)。もう少し厳しく接してもいいと思いました。

-それを聞いたら担当スタッフは喜ぶと思います。最後に今後の目標を教えて下さい。

今、運転免許を取りに教習所に通っているんですよ。送迎の業務は多いので、少しでも助けになればと考えています。また、当事者としてできることは何か?と考え、ピアサポーターの資格も取得しました。利用者さんからも職員からも頼りにされる支援員になって、この事業所を安定させたいですね。

ブーケトス ブーケトス
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