焦ったらあかんチャンスは必ず来る

𠮷田 聰さん

JSN茨木】を経て就職

焦ったらあかんチャンスは必ず来る

今回はスタッフから「パパ」の愛称で親しまれている𠮷田さん登場して下さいました。56歳で入所した時は20代のスタッフも多く、「親御さんよりも年上だった」そうです。
定年の65歳まで働き、ハッピーリタイヤを果たしておられる吉田さん。ユーモアたっぷりの大阪弁で、現役訓練生を鼓舞して下さいました。

苦手な相手にこそ大きな声で挨拶を

-今日は𠮷田さんご経験を、存分に語って頂こうと思います。

初めまして、𠮷田です。・・・しんどいから座らせてな(笑)。私は統合失調症で3級の手帳を持っています。56歳の時に【JSN】に入所し、現在72歳です。今日は耳で聞くのではなく、ハートで聞いてもらえたらと思います。私は「しゃべり」なのでたくさん話しますが、「この話はいらんな」という部分はどんどんほかしてね。これ、大事。

-𠮷田さんが働く上で大切にしてきたことを教えて下さい。

皆さん、右手と左手でグーチョキパーをして一人でじゃんけんをしてみて下さい。難しいですよね。 一回で二つのことはできません。仕事も一緒です。与えられた一つの仕事を一所懸命にやる。あれもこれも手を出したら頭が混乱して爆発する。上司は「あれして下さい、これして下さい」と好きなことを言うてきます。全部やらなくていいから、一つのことに専念して下さい。

-働く上ではさまざまな人と付き合っていかなくてはなりません。

会社には色んな人がいて、色んなことを言ってきます。独り言を言う人もいます。そんなのは聞かなくていいので、ほかしてほかして。そして絶対と言っていいほど、世の中には自分の好みの人と、苦手な人がいます。「どうしたら仲良くなれるか? 挨拶を元気よくしましょう。苦手な人とすれ違う時ほど、大きな声で挨拶をしましょう。

JSN門真の福島所長と記念撮影!

JSN門真の福島所長と記念撮影!

-難しい・・・!

好き嫌いはあって当たり前。嫌いな人っていてんねん(笑)。

-たしかに。

私ええ格好しぃなんです。だから嫌われるんです。私は本物が好きなんです。で、ルイヴィトンの本物のかばんを持ってたんやけど、隣の席の人が自分のかばんを出してきて、机の上に叩きつけた!「𠮷田さんが本物を持ってるから、私の偽物が使われへん」と。なんで怒られなあかんの(笑)。世の中は色んな人がいてるんです。

-56歳で【JSN】に来られる前のことを聞かせて頂けますか?

私は【JSN】に来る以前の会社では、総務部門で経理の仕事をしていました。コンピュータがまだない時代です。1日150~200枚の仕訳伝票を手書きしていました。終われへん。今と違って残業の制限なんてありません。「24時間戦えますか」の時代です。平日は9時から21時まで仕事をして、帰宅してご飯食べてお風呂入って寝るだけ。起きたら仕事でまた仕訳伝票を書く。週末に入金と出金の金額を確認するのですが、私はミスばっかりする。「すいません、課長。週末決算が合いません。日曜日、出勤させて下さい」と申し出ます。

-休日出勤も当たり前の時代だったんですね。

さっきの偽物を持ってたという人は私の先輩でした。「すいません、教えて下さい」と言っても私、嫌われてるから教えてくれません。それで反対側の隣席の人に聞く。年下でも先輩。丁寧に聞く。言葉遣いは丁寧に。これ大事ね。会社の空気を体で感じる。それと話は逸れるけど、身だしなみも大事です。ハンカチやティッシュなど、人に借りられないものは自分で用意しましょう。メモ用紙も必需品です。会社によっては朝礼の時にチェックされます。ヘアスタイルもチェックされます。私は毛がないのに(笑)。皆さんはあるので、髪の毛も整えましょう。

-話がどんどん逸れていきます(笑)。

さっきの話に戻ると、「やってみましたけどできません。助けて下さい」と言えるかどうか。これ大事ね。ミスしても構わないけど、気付いたら言葉に出して発信する。私は失敗だらけやけど定年まで働いて退職金ももらえました。

-一所懸命にやりすぎてしんどくなってしまう人に向けて、アドバイスはありますか?

私も当時は頭も心もパンパンでした。悩んで不眠になっても、病院に行くより仕事に行かなければ・・・と思い込んでいました。休んだらええねん、しんどい時は。ただし連絡は入れましょうね。

笑う門には福来たるニコニコしていたら平和

-【JSN】を卒業して就職した頃のことを教えて下さい。

禁煙の会社だったんですが、私はヘビースモーカー。禁煙の薬を試したり禁煙ガムも噛みました。お金をいっぱい使ったけど、禁煙できませんでした。そこで「お昼休憩の1時間は無しでいいので、15分休憩を4回取らせてさせて下さい」と会社に頼みました。

-合理的配慮義務の一環として、こういった休憩の取り方は可能です。

私が【JSN】に来る前に働いていた時代は、そういう配慮義務はありませんでした。が、世の中は変わってきています。皆さんは自分がしんどい時に「しんどいねん」と言えるお友達がいますか? 友達は大事です。

-【JSN】が設立して18年経ちますが、定年まで働き続けてハッピーリタイヤを果たした方は、𠮷田さんを含めてまだ2~3名しかおられません。

65歳で定年退職してから、7年間は年金だけで生活しています。努力したことは絶対に嘘つかへん。頑張った分、ご褒美は待ってる。嫌な世の中やけど、ちょっとだけ我慢しよう。できたら、笑って我慢しよう!

-なぜ𠮷田さんはそれができたのでしょうか?

家族がおるから。お金がほしいから。だから耐えれた。

-楽しく働くコツは?

仕事の70~80%は人間関係です。挨拶をきっかけとした会話、コミュニケーション。それができたら人間関係はほぼOK。それで笑いながらしゃべれる人を会社の中で、自分から作りにいく。しんどいで。誰もやってくれへん。でもやったら笑いが返ってくるねん。人に笑ってもらえるのって嬉しいで。笑う門には福来たる。ニコニコしてたら平和やねん。

-挨拶と笑顔が大事。でも「それすらも難しいんです」という訓練生には、どうアドバイスすればよいでしょうか?

いつもニコニコ笑顔で愛されキャラ

いつもニコニコ笑顔で愛されキャラ

まずは挨拶です! 最初は無理に笑わなくてもいいんです。

焦ったらあかんチャンスは必ず来る

-【JSN】ではどのような訓練をしていましたか?

私は手仕事が嫌いなのに、作業訓練ばかりでした。「なんでこんなこと毎日せなあかんねん。さっさと仕事を探したい」というのが、私の本音でした(笑)。当時、一緒に訓練をしていた先輩が入所11ヶ月で就職を果たしたんです。私は負けん気が強いので、そのスピード記録を破ったろう!と思いました。それで見事、9ヶ月で就職しました。

-就職先ではどのような仕事をしましたか?

ふたを開けてみると、病気になったきっかけと同じ経理の仕事でした。同じ会社で実習をした時は、全然違う仕事でパソコン作業をしていたのですが・・・。実はもう一つ、別の会社からも声がかかり、【JSN】のスタッフさんは「どちらが向いているか」と一所懸命考えてくれました。出た答えが経理やった。

-働いてみて、どうでしたか?

潰れました(笑)。機関銃のように指示を出されて「こんな会社辞めるわ!」と思い、無断欠勤しました。そして退職しました。

-先ほど「連絡は入れましょう」とおっしゃっていたのは、その時の教訓なんですね。

その会社では2~3ヶ月くらい働いたかなぁ。その後【JSN】に戻って3ヶ月ほど再訓練をして、介護の会社に就職しました。私を含めて【JSN】から3名が一緒に実習に行きましたが、非常勤職員として就職できたのは私だけでした。9ヶ月目に正社員登用のチャンスが来ました。皆さん、焦ったらアカンで。チャンスは必ず来るねん。それで筆記試験に合格して、正社員になりました。

-事前に訓練生の皆さんから募った中に、「お誘いを受けた時のスマートな断り方は?」という質問がありました。職場での「断り方」について、𠮷田さんが心がけていることはありますか?

「ノーと言えない日本人」という本があります。よう断らんのが日本人。それでしんどくなって自分が潰れてしまう。「都合」という漢字をちょっと書いてみて。都に合わせると書きます。誰が都?
自分でしょう。自分に合わせてもろたらええねん。周りに合わすからしんどいねん。でも「嫌です」と言うたら嫌われてしまう。「【JSN】に𠮷田さんという先輩がいて、𠮷田さんに誘われてるから申し訳ないけど行けません」と言うて下さい(笑)。

-いいんですか?

嘘ついたらアカンのかな? AIに聞いてみよか(と言ってスマホを取り出す)。「嘘も時と場合によっては必要なこともある」と回答してくれてます。「嘘も方便」という言葉があります。騙すのはあかんで。・・・正直に言います。私は【JSN門真】の福島所長に嘘をついたことがあります。「どうやって【JSN】を知りましたか?」と聞かれて「お医者さんの紹介です」と答えたんですが、実は嘘です。自分でインターネットを調べて電話をかけました。騙したことになるかな・・・?

ー福島所長はなんとも思ってないそうですよ。

毎日嘘ついたら嘘つき扱いされるからあかんで。でも、大事な時だけちょっとごまかそうか(笑)。過ぎ去った過去は忘れてええねん。過去は変えられへんけど未来は作れる。大事やで、メモしよな。皆さんには長い未来がある。私にはちょっとしかない(笑)。

-いえいえ。𠮷田さんにはこれからも【JSN】と関わって頂きたいな!と思ってます。

私は【JSN】に救われた。救ってくれた人とは離れたくない。私は福島所長が大好きやねん。「愛」やけど、恋愛の愛とはちゃうで(笑)。

-またぜひ、𠮷田さん語り部の続編をしましょう! 本日はありがとうございました。

大好きな福島所長は救ってくれた恩人

大好きな福島所長は救ってくれた恩人