第11回JSN理事長 西浦竹彦の「一心歩走」

19年目を迎える【JSN】
新事業の展開
2025年6月。【JSN】は設立18周年を迎え、19年目に突入しました。
これまで主軸としてきた「就労支援」「就労定着支援」に加え、「リワーク(復職)支援」でも独自の強みを出していくべく、支援内容のさらなる強化に取り組んでいます。
また4月には新事業として「デジタルサービスセンター大阪」を開所しました。
リワーク支援の難しさ
支援者の立ち位置とは
-理事の杉山先生が【JSN】のリワーク支援のアドバイザーに就任され、第一弾としてスタッフ向けの研修会が開催されました。
リワーク支援において支援者は、休職されているご本人の回復をサポートしつつ、会社と本人の間に立つという役割もしなくてはなりません。あくまで本人の希望が第一で、その上で会社の困り感も理解する。そして両者をつなぐ。通常の就労支援とは異なるスキルが必要です。
-研修会では「労務問題と本人の健康問題がごちゃ混ぜになりやすい」という話が印象的でした。
本人が望む働き方や環境と、会社が提示するものが一致しにくい場合もあります。企業には合理的配慮が求められますが、メンタル不調を経験した本人にとっては、ずれを感じることもあるようです。そういった時に支援者は何ができるのか。本人が置き去りにされることを、少しでも防ぐことが支援者の役割です。だからこそ通常の就労支援とは別に、リワーク支援という分野が広まってきているのではないでしょうか。
-就労支援以上に、会社との連携や密なコミュニケーションが求められます。
休職してある程度体調が回復し、復職が可能と判断したとします。でも会社側にとってはそれだけでOK、というわけではありません。職場の人事担当部門や産業医のご判断もあり、場合によってはリハビリ出勤などの段階も経て、やっと復職を迎えるということも多いです。その間に本人には焦りが出たり、職場が本当に自分を必要としてくれているのか、など迷いが生じることもある。復職する本人も、迎える職場も、不安がいっぱいなんだと思います。
-支援者としても対応が難しい場面です。
「会社がこう言っているから、今は復職が難しい」と本人に伝えなくてはならない場面はあります。この会社を辞めて他の道に進むべきでは・・・と悩む方も時にはおられます。しかし職場の多くは、その方に元気に戻ってきてもらいたいと考えている。会社の代弁者になるわけではないですが、職場復帰のために体調や精神的な状態、生活リズムを整えて、働ける状態になるよう準備していくことがやはり必要です。支援者は、本人が「その会社で働き続けたい」という希望を持っている以上、「働き続けるならこういう準備や覚悟がいるよ」という視点を伝え、全力で支援する。会社への信頼感が失われたり、辞める方向に誘導してしまわないよう、気を付ける必要があります。
デジタルサービスセンター大阪が
新事業として4月にスタート
-以前、西浦理事長が「色んな面を持っている人たちを、色んな面を持っている我々が支援している」と話していたことが印象的でした。
例えば支援者としての自分と、後輩スタッフを指導する立場の自分も、違う一面になります。利用者さんに接するような態度で、後輩に対し接するのは違和感がありますよね。だからと言って、ただ厳しく指導するのも違う。私たちは就労支援や企業への支援を役割としています。その経験を活かし「こんな企業に自分の支援する利用者を送り出したい」と考えているような職場を、自分たち自身もつくっていく、そんな意識や視点が必要ではないかと思います。
-最後に、この4月に【JSN】の新規事業として「デジタルサービスセンター大阪」が開所しました。
日本財団が障害者就労支援の一環として障害者就労支援事業所に委託している事業です。【JSN】が茨木市で運営する就労継続支援A型事業所の中で、国立国会図書館の蔵書をデジタル化する業務を請け負うことになりました。4月11日には現地で開所式を行い、茨木市の福岡市長、日本財団の尾形理事長はじめ多くの方にご臨席を頂きました。
-国の仕事を日本財団が受託し、その一旦を任せて頂くという形です。
非常に喜ばしいことです。正確さや精密さが必要とされる業務です。より精度の高い仕事をするために、法人全体で一丸となって取り組んでいます。日本財団としては、障害者の仕事の可能性を広げること、工賃の向上を含め当事者のメリットになる事業にしていくことを目的としておられます。【JSN】にとっても、さらなる発展を遂げる事業になると確信しています。