わが町の熱い応援団 ~企業編~ 「発酵と味噌と麺 みつか坊主 」
ともに食卓舎/HAM YOKOYAMA 代表/ハム職人
横山 拓哉(よこやま たくや)さん
大阪空港にほど近い蛍池駅前にある人気ラーメン店「みつか坊主」さん。大阪市内に店舗があった7年前から、【JSN】の実習生を数多く受け入れて下さっています。
スタッフの横山さんは、ハム職人として自らの工房を切り盛りしながら、調理も接客も担当。実習生に対しても手厚く接して下さり、いつも頼りにさせて頂いています。
企業人として、またご自身もダウン症の息子さんを育てる父親として、「多様な人材が活躍できる場」を提供すべく奔走しておられる横山さん。【JSN】が理想とする「熱い応援団」の一人です。
長男の誕生を機に
生ハム工房開設を志す
-横山さんの肩書はハム職人。このお仕事を志した経緯を教えて下さい。
元々は料理人としてレストランで修行を積んでいました。フランス料理店で働いていた時に、ハムやベーコン作りに触れ「手作りすることができるんだ!」と興味を持ちました。最初は休みの日に自宅で作ることから始まり、その後、知人の紹介でフランスのシャルキュトリー(食肉加工場)で2年間、経験を積みました。
-そこまで魅了された理由とは?
渡仏する前に生まれた長男がダウン症で、「将来は息子も作業所に通うようになるのかな?」と思い描いてみたのですが、どんなことをする場なのかよく知らなかったんです。何かを作ったり作業をする場なのかな?と考えた時に、ハム作りはどうだろうか!と。ハムを作る工程はマニュアル化しやすく、オーダーが通ってからその場で調理するわけではありません。「今日は塩漬けをする日」「カットする日」というように、段取りをつけながら作業をすることができるので、息子のように障害のある方たちでも取り組みやすいのではないかと思ったんです。
-単身渡仏された行動力がすごいです!
たまたま一緒に働いていた方から「ハム作りを学びたいならフランスへ行ってみたら?」と背中を押されました。観光ビザでとりあえずフランスへ行き、就労ビザで働かせてもらえるお店を探しました。31歳の時です。
-その間、奥さまとお子さんは日本で?
はい。最初は半年で帰国するつもりだったのですが、最終的には2年間。息子がまだ小さい時でしたから、妻には今でも頭が上がりません。また、働くお店が見つかり、就労ビザが正式に認可されるまでの間は日本に一時帰国していたのですが、いつ下りるかわからないので正社員として働くこともままなりません。そんな時期に、ここ「みつか坊主」のオーナーが声を掛けて下さり、働くことになりました。それがご縁の始まりです。
-フランスでの経験で印象に残っていることは?
僕が働いたのは町場の小さなお店で、お肉屋さんとハム屋さんと総菜屋さんを兼ねているようなところ。お肉を捌いたり、さまざまな作業を経験できたことが楽しかったです。主任がよく自宅に招いてくれたのですが、土地に根付いた食文化を体験できたことも印象に残っています。鴨や羊や豚を家畜として飼っており、自分たちの手で屠畜してそのお肉を味わう。どの部位も決して無駄にしない。とても濃厚な2年間でした。
実習生を受け入れて感じた
「みんな強いな!」
-帰国後には再び、ここ「みつか坊主」さんで働くことに。
生ハム工房を立ち上げるという目標を叶えるためには、まずは設立に必要な資格を取らなくてはいけません。そのために国内のハム専門店にて3年間、経験を積みました。その後、再び声をかけて頂き「みつか坊主」に戻ってきたのが9年前。メニューにある「ハム横山のパテ・ド・クルチェット」は、フランスで働いていたお店の名前を冠した一品です。
ー【JSN】から実習生を受け入れるようになったのは、いつ頃からですか?
7年ほど前からです。「障害者雇用に興味がある」という話をしたところ、オーナーも快諾してくれました。現場のスタッフも「やってみましょう」と言ってくれたので、人づてに【JSN】さんを紹介して頂きました。
-オーナーさんもスタッフさんも、温かい方ばかりのお店です。
オーナーは元々そういった活動をしており、スタッフも優しい人ばかり。当時は大阪市内の中津に店舗があったのですが、3年前にこちらに移転してからも含め、これまでに7~8名の実習生を受け入れました。
-受け入れてみて、いかがでしたか?
開店準備や清掃、仕込み、洗い物など多岐に渡る業務をお任せしているのですが、「みんな強いな!」と思いました。実習を経てアルバイトスタッフとして活躍してくれた方もいます。急に休むような方はほとんどおらず、長い方では3ヶ月間、最後までやり切ってくれました。【JSN】のスタッフさんのサポートがあったからこそ、です。訓練生に対してとことん向き合って、時に色んなことも言われながら、その方の将来をちゃんと考えている。スタッフさんにはリスペクトしかありません。
-ありがとうございます。
実は僕は障害者雇用のノウハウについて、あまりよくわかっていませんでした。最初は「大丈夫かな?」と思うこともありましたが、「何かあったらすぐに連絡を下さい」とスタッフさんが言って下さいました。絶対的な信頼感がありましたし、実習期間を満了した時は僕たちも達成感を得ることができました。スタッフさんとはいつでも気軽に連絡を取り合える関係ですし、僕に専門的知識がなかったことが、逆に良かったのかな?とも思います。僕が形にこだわっていたら、考えすぎて一歩を踏み出せなかったかもしれません。
ー横山さんが実習生と接する際に、心がけたことや工夫した点を教えて下さい。
何でも口に出して伝えるように心がけ、できている点を伝えて「ありがとう」と言う。リアクションが薄い方でも沢山話しかけると、たまに突っ込んでくれるようにもなりました。だんだん感情が出てきて、「あ、今は僕にちょっとイライラしてるな」とかわかるようになってきて、それが嬉しかったりもしました。
手助けしていたはずなのに
豊かさを感じる瞬間がある
-今年からは念願の生ハム工房がスタートしました。
生ハム、スモークハム、パテ、ソーセージなどを作っています。製造は僕が一人で担っており、梱包はスタッフに任せています。今後、障害者雇用も考えていますし、就労困難な若者を採用するなどして、多様な人材が活躍できる工房にしていきたいです。うちの工房のハムは、他のお店さんに比べたらちょっと高いんです。しかし、良い商品を作ってしっかりお給料を払っていきたい。
-お客さんの豊かさや喜びにもつながります。
3回に1回でもうちのハムを買ってくれたら、そこで出た利益で、働くことで困っている人たちに就労の場ができて賃金が生まれる。困っている人に喜んでもらおうと思って手助けしていたのに、逆に自分が豊かさを感じる瞬間がある。それを形にして還元できるような生ハム工房にしたいんです。
-生ハム工房とは別に「ともに食卓」というイベントを開催しておられます。
このお店の定休日を使って月に一度、開催しています。すでに24回目を迎えます。働くためのトレーニングをしている若者が盛り付けや接客などを担当するイベントなど、食を通じてさまざま人たちがつながる場を提供しています。
-SNSを見ました!とても楽しそうです。
若者たちを応援するためにイベントに来たお客さんが、逆に元気をもらって帰るような仕組みを作りたい。うちの息子や、息子のダウン症の友達がサービスを担当したこともありました。親同士が情報交換したりつながる場になれば、将来への選択肢が増えて不安が減るんじゃないかな、と思います。
-今後、どのように広げていきたいですか?
ダウン症の若者だけが接客をするカフェやレストランをやってみたいです。みんなすごく明るくて元気なんです。めっちゃ大きな声で「こんにちは!」「ありがとう!」と言う、そんな忖度しないパワーが僕は大好きです。生ハム工房の横にそんな場所ができたら・・・と考えています。
-そういったお店が注目される時代になってきたと実感します。
僕らの先輩方がすごく頑張って、認識や考え方を変えるべく動いてきたお陰だと思うんです。僕らが次の世代に何を残せるかと考えた時に、僕は生ハム工房を通じて豊かさと喜びを価値として提供したい。チャレンジですし、頑張りたいです。
-最後に【JSN】に今後求めることを教えて下さい。
もうちょっとスタッフの皆さんの給料を上げてほしいな、と思います。障害者が働く場が増えれば、支援する方の給料ももっと上がると思うんです。そして支援者という職業を、目指す人が増えればいいなと思います。福祉と支援は最後の砦です。そこが崩れることがないよう、僕らは企業の立場としてできることをやっていきたいです。
横山さんを囲んで、JSNの久保川主任&小田主任も笑顔でパチリ
大阪府豊中市螢池東町1丁目6−5 空港センタービル 2F
06-6850-3532
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