第12回JSN理事長 西浦竹彦の「一心歩走」
深く根を張り
恐れることなく前進しよう
夏、2025年度の【JSN】の事業方針が打ち出されました。
「厳しい船出の年となりましたが、みんなで力を合わせて乗り越えたい」と、西浦理事長の言葉が記されています。収益的には不調の局面を迎え、今、組織として何ができるのか。ピンチはチャンス。【JSN】の底力を発揮する時が来たようです。
稲田先生(大精診会長)が
【JSN】の理事に就任
-この7月より、稲田泰之先生(稲田クリニック院長)が【JSN】の理事に就任されました。
稲田先生はご自身のクリニックでもリワーク支援や就労支援に力を入れておられます。また、大阪精神科診療所協会(以下:大精診)の会長であり、大精診は【JSN】の生みの親でもあります。18年前、大精診の精神科医が中心となって立ち上げたのが【JSN】の始まり。大阪ならではの力強いネットワークが強みです。
-【JSN】の理事のうち、10名が精神科医です。
各先生方のホームページを見て、【JSN】を知ったという利用者さんもいらっしゃるようです。また、主治医から患者さんに「ここに行くといいよ」と言ってもらえることも、【JSN】の強みだと思います。
-近年、精神障害の方の数が増えているという統計もあるようです。
厚生労働省の調査においては、2022年の統計ではかなり増えています。ただ、正確に言うと計算方法が変わったことも影響していますし、2023年から2025年にかけてはわずかに減っているので、一概に増え続けているわけでもありません。が、「医療機関で精神障害と診断される方」の数はたしかに増えています。
-その理由や背景は?
まずは精神科の医療機関が増えていること。精神科の敷居が低くなったことや、大病院ではなく地域に小規模なクリニックができて通いやすくなった、という点も背景にあると思います。
また、発達障害のように以前は病気や障害と認識されていなかった方が通院するようになり、診断を受ける方が増え、治療や支援の裾野が広がったことも理由の一つです。
-たしかに、通院に対するハードルが低くなってきたと実感します。
昔は精神科というと住宅地から離れた場所の病院で、通院するより入院する場所、というイメージが強かったと思います。僕が精神科医になった1992年には、大阪市内でも精神科医療機関がない区がいくつもありました。しかし今では大阪市内に年に何軒も、新規で精神科クリニックがオープンしています。駅の近くや住宅の近辺に精神科クリニックが増えて、以前よりも気軽に相談できると感じられ、患者さんの選択肢は増え、通いやすくなったと思います。
強い風でも倒れない
積み重ねが【JSN】にはある
-【JSN】を取り巻く環境では、リワーク(復職)支援をおこなう事業所や、B型事業所も増えてきています。
一定の資本と条件があれば障害福祉サービスの事業所を開設できます。リワークプログラムに注力されているところや、また近年はB型事業所が年々増加する傾向にあります。フランチャイズ展開をしている会社もあるようです。支援の裾野が広がることは、それだけ地域が豊かになることだと思いますが、一方で支援の質が問われる状況でもあると思います。多様化する精神・発達障害者の課題を考えると、マニュアル化された支援では救いきれない利用者さんがいることは確かです。
-その中で【JSN】の役割とは?
自分たちがきちんとした支援を続けることで、本来の支援のやりがいや奥深さを啓発する存在でありたいですね。さまざまな考え方の事業所と競争するつもりはありません。支援の本質を見失わないように、【JSN】の考え方に共感してくれる事業所と、より良いお付き合いをしながら切磋琢磨していけたらと考えています。
-2025年度は【JSN】にとって厳しい船出となりました。
就労移行支援の利用者の減少や、報酬単価の引き下げ、またA型事業の方向転換などにより、【JSN】の収益も低下。前年度の収支においては赤字決算となりました。
-乗り越えていくためには?
アフリカの古いことわざで「When the roots are deep there is no reason to fear the wind」という言葉があります。「深く根を張っていれば、風を恐れることはない」。今の【JSN】にも同じことが言えるのではないかと思っています。今は強い風が吹いていますが、それで倒れないだけの基本の積み重ねが私たちにはあります。これからもしっかりと根を張りながら、恐れることなく前進していきましょう。





