第2回JSN理事長 西浦竹彦の「一心歩走」

広報誌 「熱人」50号掲載(2022年6月発行)

16年目のJSN
持続可能な組織へ

この6月で【JSN】は15周年を迎えました。開設当初は手探りだった支援も、多くの利用者さんと関わり、企業や関係機関とのお付き合いを重ねる中で、年々成長してきたように感じます。

精神障害者を取り巻く環境や法律、医療も変化する中で、今、改めて【JSN】の存在意義や強みを見直す時期に来ているのではないでしょうか。持続可能な組織を目指し、西浦理事長体制での2年目か始まります。

15年前に比べ
支援も変化・進化している

-いよいよ、16年目がスタートしました。

開所当時は利用者のうち統合失調症の診断の方が5~6割、発達障害の診断の方は1割程度でした。ところが最近の報告では、発達障害の方が約5割、統合失調症の方が1~2割とそのバランスが逆転しています。成人の方で発達障害と診断される方が増え、社会生活を送る上での困難さが認識されるに連れ、支援のすそ野が広がり、【JSN】をはじめとした就労支援機関の利用につながっています。

-支援する側も理解を深める必要があります。

「理解はできるが、整理がつかない」という状況が懸念されます。精神科医療の現場で発達障害という言葉が広まった数年前には、「あの人もこの人も発達障害だ」とひと括りにされてしまい、逆に支援が一辺倒になった時期があります。また、発達障害という特性に加え、環境やトラウマが要因となってしんどくなってしまうケースもあります。そこで今、「当事者一人ひとりをきめ細かく理解しよう」ということが求められているように感じます。15年前と比べ、利用者の方の特性が変わっている以上、【JSN】の支援の特徴も変化していないとおかしい。就労支援の技術も進歩しているはずです。

-【JSN】の理事でもある西川瑞穂先生(かく・にしかわ診療所)が、発達障害の方への支援の方法や、アセスメントの見立てについて、きめ細かく指導して下さっています。

病名や心理検査の結果などで利用者を理解した気になってしまうのではなく、その方が【JSN】に来るまでの人生を理解し、支援をおこなっていく。その部分への踏み込みが甘いと、西川先生は特に厳しくおっしゃいます。カンファレンスに僕も参加したことがありますが、「これ聞いた?」「これは主治医に問い合わせた?」と、まるで大学病院での検討会のようでした。

「皆が作っているJSN」
スタッフのアイデアを生かす

-4月から6月にかけて全3回、「精神障害者の働くを考える」と題して、大阪精神科診療所協会(以下:大精診)と【JSN】が共催するオンラインセミナーがおこなわれます。

第一回目はすでに終えており、田川精二顧問、【JSN茨木】の横田隆行所長と厚生労働省障害者雇用対策課の小野寺徳子課長のお三方が、医療・支援者・厚労省それぞれの立場から就労支援に対する取り組みや課題について、話して下さいました。第二回目は企業の方、第三回目は行政の方が登壇して下さいます。参加者は医療機関で働く方が7~8割。各回50名の参加を見込んでいます。

- 大精診との共催という点が興味深いです。

大精診に参加されている先生方の中には、「就労支援を必要とする患者さんは来ているが、どう支援していいかわからない」という先生が、まだまだいらっしゃると思います。そういう先生方にぜひ、【JSN】のことを知って頂きたい。実際、患者さんが「就職しました」と報告に来られることは、医者としてとてもうれしいことです。診察室にスーツを着て、名刺を持って訪ねて来て下さると、感慨深いものがあります。一度そういう経験をすると、「次もまた【JSN】に患者さんを紹介しよう」と、思って頂けるのではないでしょうか。

-今後の【JSN】の計画や動きを教えて下さい。

現場のスタッフから上がってくる声を、我々は運営側としてちゃんと拾い上げ、生かしていきたいと考えています。先日、業務改善のためのアイデアをスタッフから募集しました。数十件出てきたのですが、とても良い意見がたくさんありました。スタッフ一人ひとりが「皆が作っている【JSN】」という実感を持つことができれば、モチベーションもさらに上がります。皆が考えていることを、実際の運営に反映できる組織にしていかなくてはなりません。