第3回JSN理事長 西浦竹彦の「一心歩走」

第3回JSN理事長 西浦竹彦の「一心歩走」
広報誌 「熱人」51号掲載(2022年12月発行)

「働き続けるを支援する」
スタッフたちを支えるために

新体制としての2年目も、あっという間に半年が過ぎようとしています。就任後は「一心走歩」にスタッフを支える仕組みづくりに奔走してきた西浦理事長。経営も安定の兆しが見られ、徐々に成果が出始めているようです。

第一回目の取材では、「実はサボッているんです」と話していたランニングも、最近は復活している様子。このコーナー名がモチベーションになっているそうで、とても嬉しいです!

【JSN】自体を
働きやすく学び多き職場に

-新体制での2年目。手応えは?

1年目はスタッフから現場の声を聴くことに力を入れました。決算が赤字から黒字に変わったことは、スタッフの努力の成果だと思います。

-大きな収穫です。

現場の声を拾うために、金塚統括施設長がスタッフ全員と個々に面談をしたり、各事業所のスタッフから業務改善のアイデアを募りました。その結果、皆さんがどのような考え方で仕事に向き合っているのか、支援をおこなう上での困りごとなども見えてきました。全部で約50通の回答をスタッフから得られたのですが、まだまだ遠慮していることはあると思います。組織が大きくなった今、スタッフのことを「わかったつもり」になることは危険です。丁寧に、意見を拾い上げていくことが大切だと考えています。

-具体的にはどのような意見がありましたか?

指導的な立場を担うスタッフが「学びの場」を必要としていることがわかりました。【JSN】ではなんとなく、「背中を見て学ぶ」ことが浸透しています。しかし、後輩たちからすると「そもそも教えてもらっていない」という事態も、今後起こり得るのではないか。教える場所や機会を意識して作っていきたいと考えています。

-支援技術をしっかり伝えていく。

対人支援の仕事をする上での悩みは、大きく分けて二つあります。一つは支援技術そのもの。もう一つは対人的な関係性。つまり、利用者さんとの信頼関係や、支援者同士の協力体制です。この辺りの課題を整理しつつ、働きやすくて学びの多い職場にする。そのための“血の通った”仕組みづくりを、求められているように感じています。

定年まで働き続ける
充実した人生を支援する

-今年度の見通しや目標は?

まずは就職の実績を積み上げていくこと。これから数年間は、全国的に身体障害者の定年退職が一気に増える見込みです。法定雇用率を満たすために、企業は障害者雇用の間口を広げるでしょう。【JSN】には企業との間で培った信頼関係があります。それらを基に、利用者さんが社会で働く機会を数多く生み出せるチャンスです。また、それだけ多くの身体障害の方が、定年まで働き続けておられるということは、我々も精神障害の方を支援する立場として負けていられません。最終的にその方の人生が「長く働けて充実したものになったなぁ」と思えることを目指して、支援を続けていきたいですよね。

-理事長個人では、何か動きはありますか?

二つあります。一つ目は、労働大学校で「障害者雇用専門研修」の講師を担当しました。全国からハローワークの職員さんが各日50名ほど集まり、10月に2回おこないました。専門援助部門を担う職員さんが、日々どのような視点で現場に立っているのか、深く知る機会になりました。

-もう一つは?

(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構が主催する「精神障害者の等級・疾患と就業状況との関連に関する調査研究委員会」の委員として、意見を述べる機会を得ました。身体・知的障害と違い、精神障害には「重度」の定義がなく、精神障害者手帳の1~3級までの等級で区分されます。その中で2級の方が6割。2級の幅がとても広く、単純に1級だけが重度とは言えません。第一回目の研究会では、その辺りについて言及しました。精神障害でも重度の基準が明確になれば、短時間就労のカウントにも良い影響が現れてくるのではないかと期待しています。ただ、等級と就労の困難さは必ずしもイコールではありません。就労に向けて努力されている当事者の方々の実情に見合うよう、「困難さとはそもそも何か」を議論していかなくてはなりません。