突撃!事務局長金塚 日本CHRコンサルティング株式会社 代表取締役 横山・渡辺クリニック 名誉院長 渡辺 洋一郎 先生
企業のメンタルヘルスマネンジメントをトータルでサポートする日本CHRコンサルティング(株)さん。代表を務める渡辺先生は「健康な日本を企業から作りたい」との思いで活動を続けておられます。精神保健と産業医学の融合による独自のアプローチで、従業員の健康と企業の成長を同時に実現すべく、さまざまなサービスを提供されています。
その一環として【JSN】もこのたび、リワーク支援機関として提携させて頂きました。実は【JSN】の設立発起人の一人でもある渡辺先生。常に時代の一歩先を行く、鋭い洞察力と幅広い視野に、金塚事務局長が迫ります。
本人のニーズを常に
確認しながら付き合っていく
金塚:現在、先生は精神科産業医とアドバイザーの活動が中心ですが、ここ横山・渡辺クリニックでも週二日、診察をしておられます。
渡辺:金曜の夜と土曜のみです。私は7年前から新患は受け付けていないため、患者さんは長く診ている方ばかりです。20~30年に渡り診ていると「そういうことか」とわかってくることが多くあります。
金塚:長くお付き合いすることによって、本来のその方を知ることができ、治療の方法なども変わってくるということでしょうか?
渡辺:はい。大まかに言うと、三つのパターンがあるように感じます。おおむね大丈夫な方。だんだん上手くいかなくなっていく方。時々あっ!というようなことが起こるけど、平穏に戻っていく方。
金塚:私たちの支援も似たようなところがあります。その支援が効果的だったかどうか。自分の中での答え合わせは、10年20年付き合って初めてできるのだなぁと。
渡辺:ただ、正解はいつになってもわかりません。こちらから「これが正解」という見方をすると、上から目線になってしまいます。それよりも「本人が何を求めているのか」というニーズを常に確認しながら付き合っていく。その中でも特に経験値が必要だなと感じるのは、「この方は本人の言う通りにやってみても大きな心配がないだろう」という時と、「やっぱりちょっと心配があるな」という時の予測です。
金塚:支援も同じで、経験値によってその辺りの見立てができるようになります。
「石の上にも3年」は
本当に美徳なのか?
金塚:現在、産業医としてはどのくらいの数の企業と関わっておれますか?
渡辺:約20社です。ただ、産業医というのは私の活動の一部であって、本来私が日本CHRコンサルティング(株)で目指しているのは、「一人ひとりの従業員が、健康でイキイキと働くためのサポートをする」ことです。そうすれば当然、企業の業績も向上にもつながります。産業医活動は、その理念に基づいた資源の一つです。
金塚:なるほど。開業医の活動とはまったく異なりますね。
渡辺:開業医は「診断・治療モデル」です。産業医モデルはそうではありません。病気があっても、その方を職場の中で生かしていく。生かすための「適応支援」が産業医の活動です。
金塚:環境にどう適応させていくか。
渡辺:それだと「環境」がもう決まっている前提になってしまいますよね?
金塚:「周りの方々が本人を理解すること」等を踏まえた上での発言と捉えて頂けると・・・。
渡辺:企業の方々もそうおっしゃるのですが、頭のどこかには「いかにその方を職場に適応させるか」という先入観があります。日本の文化自体が、仕事に人を適応させる発想です。しかし、人に仕事を適応させるという考え方もありますよね。日本では「石の上にも3年」という言葉が美徳として受け入れられていますが、本当にそうでしょうか。もっとその方の得意なことを任せたほうが、お互いにとってプラスになるのではないでしょうか。
金塚:そう言うと「本人のわがままを聞いて、楽をさせていいのか?」という声が聞こえてくることがあります。
渡辺:特性を生かすことはわがままだとか、楽をすることは悪いことだという無意識の偏見が、日本ではすごく強い。そういった文化をもう一度振り返ることが、とても大事だと考えています。
金塚:一人ひとりが職場でイキイキと働くために、具体的にはどのようなサポートをしておられますか?
渡辺:通常は一次予防、二次予防という形でメンタル不調を予防していくわけですが、我々は「ゼロ次予防」を意識しています。どういうことかと言うと、一次予防が「病気にならないようにする」ことだとしたら、その前段階として「心理的安全性が高い職場」と「仕事と本人の適性が合っていること」が必要です。その上に、働きやすい職場環境づくり(コミュニケーションの良い職場)、社員のストレス対処能力を向上させるためのセルフケア、ストレスマネージメント研修といった一次予防があると考えています。
金塚:その上でさらに、早期発見という二次予防がある。
渡辺:二次予防の際には管理職・上司がポイントになってきます。二次予防で引っかかってくる方は、適応障害であるケースが非常に多い。そのベースには発達障害や知的障害や統合失調症などがあるわけですが、適応がうまくいかないから発症しているのです。適応のためには結局、対人関係です。つまり、上司の対人マネジメント能力・コミュニケーション能力が問われてきます。
金塚:本来はその能力が高い方が、管理職になるべきなのですが・・・。
渡辺:日本は年功序列の社会なので、そうではないケースが多い。ですから、管理職向けにコミュニケーションスキルを高めるための研修をおこないます。もう一つは、部下を指導するためのスキルを高める研修です。これらを実施している企業は、非常に少ないのが実状です。
働きやすい職場が
健康経営につながる
金塚:御社ならではの強みが他にもあると思います。いくつか教えて頂けますか。
渡辺:精神科医療がベースにあるため、休復職の判定にも専門性があることです。また、単に診断だけではなく、「適応」の視点を持ってサポートをおこなっています。精神科医として、また企業の中の人間である産業医として、双方の専門性を持って支援をすることができます。本人にどのような能力や適性があるのか、面談はもちろん、適性検査によって判断する。弊社の精神科医はそのための見識も深めています。
金塚:先生は精神科医同志のネットワークも幅広く持たれています。
渡辺:三次予防の段階では、休職して通院が必要になることがあります。医療機関とのコネクションは全国にありますので、紹介できることは強みです。また、事業所の中だけでなく外でもトータルにサポートをするために、24時間365日対応の外部相談窓口を設けています。
金塚:管理職も含めた従業員の方は、いつでも電話相談ができるのですね。
渡辺:他にも、弊社が提供しているストレスチェックでは、単に検査だけで終わるのではなく、その後の職場環境を改善するためのプログラムを提供しています。私が厚生労働省のストレスチェック制度の策定委員を務めていたこともあり、「働きやすい職場をつくることで従業員のストレスが減り、健康経営につながる」という理念の元、実施しています。
金塚:つまり精神科産業医から各種研修、電話相談窓口、ストレスチェックとトータルでサポートができる体制である、と。復職の支援においては、【JSN】もリワーク機関として提携させて頂いています。
渡辺:休職した方が復職する際に、本当にその仕事に適性があるのか。適性検査や復職訓練を【JSN】にお願いしています。タイアップすることで、さらに守備範囲が広がったと感じています。
金塚:休職から復職、さらに定着までの流れの中で、重視しておられるポイントは?
渡辺:復職の判定とは「復職成功」の判定でないといけません。復職後にその方が健康でイキイキと働くことができ、職場としても戦力になり、双方が良かった!と思えることが成功です。本人が機嫌よく働けていても、人の半分しか仕事ができていないのであれば、成功とは言えません。ところが、今の復職判定の基準は「決まった時間に起きて通勤できますか」という復職準備性のみです。それでは十分なパフォーマンスが発揮できるとは言えません。ですから我々は、適性検査や不調の原因をはっきりさせて、調整や研修をおこない、「これだったらやっていけそうだ」というレベルまで到達して初めて復職させます。
金塚:実際そこまでやっている企業はあるのでしょうか?
渡辺:他社は知りませんが、私が産業医を務めている企業では、主治医から復職可の診断書が出た後、平均して2~3ヶ月かけて復職のためのサポートをおこないます。「会社のために役に立っている」という手応えは、本人の精神的健康にも大切なことです。
金塚:やりがいにもなりますよね。評価をされることで定着にもつながります。
渡辺:企業からは「そんな時間もお金もかけられません」と言われますが、復帰して戦力になることは、企業側にとっても大きなメリットになります。
金塚:御社がサポートをおこなった企業での成功事例を教えて下さい。
渡辺:昨年から弊社がサポートを始めたある企業では、今年は約80名の新入社員が、入社半年の時点で一人も退職していません。3年前は50数名が入社し、1年後には15名が退職していたそうです。「なんとかしなくては」と弊社に声をかけて下さいました。採用時の適性検査から精神科産業医の配置、心理士の派遣、研修の提供など、トータルで関わっています。
本人、事業所、社会のために
D&Iを進めていく
金塚:先生が企業の健康経営を考える上で今後、一番力を入れていきたいテーマは?
渡辺:やはり「本人の適性を生かす」ことです。性格適性と能力適性の両方を見なくてはいけません。これは日本の教育の遅れているところなのですが、能力について語ることが差別のように思われています。そのため、自分の適性について認識している人が少ない。「運動会で足の遅い子がかわいそうだから、全員で一緒に走りましょう」というほうが、私は差別だと感じます。これをすることで逆に「足の遅い子はダメな子」となってしまいます。
金塚:日本の教育を見直す必要があります。
渡辺:一人ひとりの良いところを生かそうという視点がまったくない。学校教育や親の考え方を含め、パラダイムシフトが必要な時期に来ていると思います。この考え方に共感してくれる経営者層は多いのですが、健康管理やメンタルヘルスの話とは別の話だと考えておられるようです。そのため、「職場のリスクマネジメントと生産性向上」のテーマに絡めて話をすると、興味を持って聴いて下さいます。
金塚:先日、御社のオンラインセミナーにおいて、【JSN】統括施設長の茂木が登壇させて頂きました。今後もさまざまな企画を共におこなっていきたいと考えています。
渡辺:先日のセミナーでは、障害者雇用や休復職支援における「増える責任や現場の負担」をどう軽減するかに焦点を当て、合理的配慮や再発予防の具体策について茂木さんとお話ししました。予想以上に反響があり、多くの方が参加して下さいました。今後はさらに多くの経営者層にアプローチし、参加して頂くための告知方法を模索しているところです。日本には何十万社もの企業があります。その経営者層の方々に情報を提供し、聴いて頂きたいですね。
金塚:“発信”ですね。最後に、【JSN】に今後、期待することを教えて下さい。
渡辺:19年前に【JSN】が発足する前は「病気が治った方が仕事に就く」ことが一般的でした。「精神障害がある方が働く」というのは、障害者を迫害しているような捉え方をされることがありました。しかし、初代の田川理事長と三家副理事長という、誰よりも患者さんの立場で物事を考える精神科医が中心となり設立した法人だからこそ、批判の声が思ったよりも少なかった。
金塚:渡辺先生も設立の要になって下さった一人です。実際、批判の声はかなりあったと思います・・・。
渡辺:設立に際しては、相当に批判の声もありました・・・。しかし、いざ始めてみると、「就労移行治療だな」と感じるくらい、仕事をすることは治療につながっていることがわかりました。【JSN】が発足したことは、ものすごいパラダイムシフトだったと思いますよ。今後に期待することとしては、D&Iを本当の意味で進めていく。制度だからやるのではなく、本人のため、事業所のため、社会のため。皆にメリットがあるから進めていく。そこを理念として持っておいてほしいと思います。
金塚:ありがとうございます。ぜひ、そのようにしたいと思います。多様性を持った一人ひとりを支援することで、彼らを通して企業、そして社会が変わっていくことに貢献していきたいです。
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