事務局長金塚の突撃!現場トーク 株式会社リウェル 代表取締役 鈴木 友紀夫さん

2026年6月18日

メンタルヘルス不調による休職を繰り返させない”再休職率0%”を目指し、リワーク(復職)支援に取り組んでおられる(株)リウェルさん。東京と埼玉に通所型リワークセンターを構えるほか、企業向けにオンライントレーニングのプログラムを提供しておられます。

設立は2022年4月。実はそれ以前から鈴木社長とは面識があり、設立に向けてのサポートや相談にも乗っていたという金塚事務局長。同じくリワーク支援も手がける【JSN】ですが、ライバル関係ではなく強みを生かし合いながら、温かいお付き合いをさせていただいています。

本人+企業を支援
未来につながるリワーク

金塚:鈴木さんが(株)リウェルを設立したきっかけを教えて下さい。

鈴木:僕は2022年にこの会社を設立する前は、(株)エムステージという会社に在籍しており、2016年から産業保健事業部を立ち上げて運営していました。数々の休職者問題に触れて感じたのは、「企業の中だけでメンタル不調の問題を考えてもうまくいかないのではないか」ということ。一番残念だったのは、メンタル不調の休職者に対して、企業側があきらめており、マイナスにしか見ていないという実状でした。

金塚:「なんとか復職を」という前向きな話にはならない、と。

鈴木:はい。なんとか未来につながるよう、リワーク(復職)支援で復帰を実現したい。それが最初の思いです。企業から見れば一人の従業員ですが、個々から見れば大きな人生の分岐点じゃないですか。「未来につながるリワークを提供する」という弊社のミッションは、そこから生まれました。

金塚:私が鈴木さんと初めて出会ったのは、ちょうどその頃でした。

鈴木:立ち上げる前に色々と相談をさせていただきました。

金塚:「再休職率0%」という目標を掲げておられます。そこに向けて、具体的にどのような取り組みをされていますか?

鈴木:弊社の活動のメインは「リウェルリワークセンター」という復職支援のための施設です。同時に、オンラインでのトレーニングや、企業向けのルールやシステム作りのサポートもしています。また、別の枠組みではあるのですが、産業医によるサポートも請け負っています。復職に向けて、総合的な解決策を提案しています。

金塚:「リウェルリワークセンター」だけでご本人への復職支援をしても、その他の部分の課題を解決しなくては0%には到達できない、ということですね。

鈴木:はい。ご本人だけが努力して変わっても、企業側のスタンスや、職場の精度や考え方が変わっていかないと難しい。常に採用側や雇用主側の視点を考え、そちらをどう支援するかを考えています。

リワークトレーニングのコアは
自己理解を深めること

金塚:ご本人への支援について聞かせて下さい。通所とは別にオンラインでのトレーニングがあるとのことですが、どのような内容ですか?

鈴木:リワーク支援施設が少ない地方において、どうやってトレーニングの機会を提供していくか。そう考えた時に、「リウェルリワークセンター」で対面でおこなっている支援プログラムを、オンラインで受講していただく「Wellcoリワーク」のシステムを開発しました。企業に「従業員向けのトレーニングプログラム」として導入いただいています。

金塚:たしか大阪の(有)奥進システムさんに開発を依頼して実現したと聞いています。

鈴木:はい、金塚さんのご紹介ですよ(笑)

金塚:そうでしたか!普及は進んでいますか?

鈴木:少しずつ利用人数が増えてきています。センターでの対面のトレーニングと比べても、利用者の満足度はほとんど同じです。復職率は対面のほうが少し高くて、95%。オンラインは85%です。もっと差がつくかな?と思っていたのですが、そこまでの差にはなりませんでした。

金塚:対面とオンラインの一番の違いは?

鈴木:現時点ですと、オンラインでは集団のトレーニングができていないことです。個別に支援員が付いてのトレーニングがメインです。また、通勤訓練がないこと。しかし、それらをカバーするだけの強みもあります。例えば、集団でのトレーニングよりも自己理解を深め、自分を掘り下げることができます。大勢では集中できない方も、オンラインであればしっかり自分と向き合うことができています。自己理解はリワークトレーニングのコアな部分です。自分一人では気付かない面も当然ありますので、支援員が入って定期的に面談をおこなっています。

金塚:対面のほうは20名定員のセンターが東京と埼玉に2ヶ所。ほぼ満員で稼働されています。オンラインのほうは何名くらいが受講されていますか?

鈴木:年間30〜40名で、徐々に増えています。もう一つ、対面とオンラインの違いについて言えば、対面のほうは福祉サービスを使って自主的に入所された方が対象です。行く行かないは個人の裁量です。一方でオンラインのほうは企業との契約ですから、「復職のためにこのトレーニングを受けなさい」と企業側から言われて、受講する方がほとんどです。もちろん事前の説明を丁寧におこなってから受講していただくのですが、ある意味、半強制的な側面もあります。しかし、最初は嫌々受けていた方も「自分のためになった」とおっしゃいます。

金塚:なるほど。通所された方からは、どのような感想が聞かれますか?

鈴木:施設に通所した方からは共に頑張る仲間ができ、「勇気をもらいながら前に進めるようになった」という声が多いですね。横のつながりもできますし、OBやOGの声が励みになることもあります。その辺は通所のメリットでもあります。

元気に働き、戦力になる
復職のゴールを企業と共有

金塚:企業が復職のために、オンライントレーニングを導入して投資をするメリットとは?

鈴木:そこを見える化するために、「経済的なメリット」を整理しました。やはり経営者は利益や生産性を重視します。具体的には「損失のイメージ図」を作成しました。メンタル不調から休職・離職者を出した場合、企業側の損失点は四つあります。一つ目は休職者の代わりに業務を遂行する業務代替費の損失。二つ目が離職に伴う採用費の損失。三つ目は傷病手当や、長期化した場合の経済的支援に伴う損失。最後はプレゼンティーズム、つまり不調を抱えたまま働いているので、本来の力を発揮できていないという損失です。これらの損失を金額化し、「20〜30%は改善する可能性がある」「損失をなくすためにどうすればよいか」をお伝えしています。

金塚:休職者と企業をつなぐ上で、鈴木さんが大切にしている価値観は?

鈴木:「ゴールを共有しよう」というキーワードを掲げています。復職がゴールではなく、あくまで元気に働いて活躍すること。そのために双方が何をするべきか。そこを周知していただくための資料や動画づくりにも力を入れています。

金塚:企業から見ると、元気に活躍して「戦力化」してもらうことがゴールになりますよね。

鈴木:ゴールは同じはずなんです。が、双方のズレや誤解が結構あるように感じます。理解を深めることで、無駄な争いが減ります。

金塚:一般的な障害者雇用と同じですよね。企業側は雇用率達成をゴールにしていて、とりあえず採用する。当事者も採用されたいから、就職をゴールにしてしまう。私たちの法人では「働き続ける」「戦力化する」ことを目標にしています。

鈴木:私たちも復職6ヶ月後の定着率のデータは当然取ります。しかし、実際に再発するのは復職から1年前後が多いという調査結果もあります。最大3年を見据えた定着支援を考えていく必要があります。また、離職はしていないけど不安定なまま働いているケースもあると思います。そこを指標化することは課題の一つです。

金塚:今後の事業展開において、考えておられることはありますか?

鈴木:現在は東京と埼玉の2ヶ所だけですが、今後は全国の主要都市に10ヶ所ほどは拠点が必要だと考えており、FCでの展開も計画しています。同じ思いの方にノウハウを提供して、全国で施設を運営できれば理想的です。無理して自分たちだけで広げて歪みが出てくるよりも、そのほうがメリットがあるのではないかと。

金塚:たしかに、リワーク施設は全国でも増えています。

鈴木:このまま増えていって、クオリティーをちゃんと担保できるのかな?と正直心配になることがあります。プログラムはある程度自由なので、変なことをやってしまうところが出てきて、「福祉のリワークってダメだよね」と全体が悪いほうに見られてしまうリスクは、今後あり得るのではないかと危惧しています。

金塚:医療機関が提供するリワークも増えています。その辺りはどう捉えておられますか?

鈴木:僕は「棲み分け」が必要だと考えています。双方の強みがあると思います。福祉のリワークだと、働くための実践的なトレーニングをおこなうことができます。一方で医療機関では、ドクターの元で疾病に対するリスクマネジメントを細かくおこなうことができます。我々も状況に応じて、医療機関のリワークを紹介することがあります。得意分野を色分けして連携したほうが効果的ですし、結果に結びつきやすいと考えています。

支援の「質」を上げ
健康経営に貢献したい

金塚:人材育成については、どのような考えで進めておられますか?

鈴木:まず教育論的なところでは、看護師を育成するための「ラダー教育」を参考に人材育成をおこなっています。分野を分けて、段階を踏んで、支援方法や考え方を統一して学んでもらいます。ベテランの職員も時折そこに立ち返って、ベースになる考え方からズレてきてないかチェックするようにしています。もちろん、その上で支援には個性があっていいと思います。強みを生かすような担当や配置を考えています。

金塚:その教育する役割はセンター長が担っているのですか?

鈴木:はい、サービス管理責任者がおこないます。また、弊社ではプログラムは施設ごとに作るのではなく、共通したプログラムを作成して定期的にブラッシュアップしながら、全施設で使っています。

金塚:サービス管理責任者の教育は、鈴木さんが?

鈴木:いえ、私はそこまで関与していません。直接の教育はエリアマネージャークラスの人材がおこなっています。私も多少はチェックしていますが、私の役割は弊社の考え方や方針、社会における立ち位置を、ブレずに伝えていくことだと考えています。

金塚:考え方や哲学を浸透させるために、工夫しておられることはありますか?

鈴木:まずは「採用」をスタートラインとして、大切にしています。人間性や考え方を考慮して採用します。単に支援が好き、だけではダメ。浅いとやりがいにはならないし、支援の仕事を長く続けることはできません。

金塚:最後の質問です。企業の「健康経営」とは何か、鈴木さんの考えを聞かせて下さい。

鈴木:「健康経営」って、いいキーワードだと思うんです。私が前職で2016年に産業保健事業部を立ち上げた時は、この言葉はまだ一般的ではありませんでした。産業保健のベースには法令順守があると思いますが、法令を守ることが目的化してしまっている。しかし、この言葉が生まれたことで「生産性を上げる」「健康な経営をする」という部分が目的になってきた。

金塚:守りの障害者雇用から、風向きが変わってきましたよね。

鈴木:ただ、中身はまだまだついてきてないと感じます。今までは構造を作ることに力を注いできたけれど、これからは「質」を上げて効果を出していく。そのための具体的な方策として、僕らが手がけているリワーク支援が貢献できると考えています。ですから今後、健康経営の効果や形がより求められてきた時に、さらに必要とされるサービスになっておきたいですね。

金塚:障害者雇用もようやく、「質」と言われ始めてきました。「雇用の質」「支援の質」という言葉が聞こえるようになり、私たちも経営を意識した実績を残していかないといけないな、と感じています。

鈴木:障害者雇用も、これまでは「箱(施設)を作る」時代だったと思うのですが、それは最終の目的ではありません。障害者の方が能力を生かして元気に働く。そうすることで企業の生産性にも貢献する。今はまだその過程なのだと感じます。

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