JSN金塚事務局長のわくわくワーク JSN金塚事務局長のわくわくワーク
2025年9月15日

相手から学ぶ(人が育つ環境・人を育てる環境)

30代の初め頃、障害者雇用に取り組んでいる中小企業の社長と、ある集まりのあと一献交える事になった。というか当時はその社長と対峙して飲むなんて・・・怖くて、怖くて、いつも社長の席から離れた席に座っていた。

お酒が進み少し酔いが回ってきたとき、社長がふいに「なぁ金塚、人が育つ環境、育てる環境って、どんな環境かわかるか?」「……」頭の中で答えを探すが、明確な言葉が出てこない。

社長は一刀両断「そんなこともわからんと、就労支援やっとるんか!」

振り返れば、その頃の私は「直接支援」にばかり目を向けていた。目の前の人への関わりや助言は懸命にやっていたが、「環境づくり」という間接的な支援について、深く考えたことがなかったのかもしれない。

その夜を境に、私の支援の視点は大きく変わったと思う。
職場のルール作り、育成プログラム、評価制度、フィードバックの方法。そうした「人を取り巻く環境」こそが、成長を促すきっかけになると。

今では、企業の人と話す機会があれば「育つ環境、育てる環境」をどう思いますか?と投げかけている。「一緒に汗を流すことの大切さ」「現場の声を反映したルール作り」「人に合わせた配慮の仕組み」企業によって考え方はさまざまだが、その一つひとつに学びがある。

気がつけば、それは私にとって視野を広げる貴重な時間であり、同時にとても楽しい時間でもある。あの夜、社長に投げかけられた一言は、今も支援者としての私の中に深く根を下ろしている。

「人」という「環境」に触れて変化した自分。まだまだ刺激ある「人」に出会っていきたい。

ちなみに今では怖い社長とは2人で定期的に飲みに行っている。飲みすぎて記憶が飛んでいる事も多い() しかし、よく飲み、よくしゃべり、よく笑いで楽しみの場になっている!!

 

2025年9月8日

相手から学ぶ(理解してくれるかもしれない)

「月に23万円くらいもらえればいいんです。」
シュウポツ時代のエピソード。新しく相談に訪れた20歳そこそこの若い男性に「お給料はいくらくらい欲しいですか?」と尋ねたとき返ってきた答えだった。

正直、二十歳で月に2万円?生活はどうするのだろうか。違和感を覚えたがその場では深く追及せず、相談を重ねながら関係を築いていった。彼はやがて企業実習に参加することになった。

実習が始まってしばらく経ったある日、休憩時間に彼がぽつりと話し出した。
「今まで就職しても、なかなか長続きしなかったんです。そのたびに、お母さんがとても落ち込んで。それを見るのが本当に辛くて。だから、せめて月に23万円くらいの負担で済む仕事なら、無理せず続けられるんじゃないかって思ったんです。」

その言葉に、胸の奥が熱くなった。
本当は彼だって、もっとお給料が欲しい。欲しい物だって、やりたいことだって、きっとたくさんある。それでも、「辞めて母親を悲しませるくらいなら」と、自分の望みを小さく見せていたのだ。

そのとき改めて気づかされた。私たちの前に来る人は、最初からすべてを打ち明けるわけではない。信頼が生まれた瞬間、初めて心の奥底にある本音や悩みが顔を出す。こちらが相手を理解するのではなく、相手が「理解してくれるかもしれない」と思える存在になること。それが支援の出発点なのだと。

 

2025年8月31日

病と疾患の違い

ドラマ「19番目のカルテ」の中で、主人公のドクターが「病と疾患の違いがわかっていない」と口にする場面がある。最初は部下のドクターもその意味をすぐに理解できない。しかし、患者の話をじっくりと聴く中で、その言葉が少しずつ腑に落ちていく。
ここで示される「疾患」と「病」の違い。疾患とは、医学的に診断される病気そのものを指している。一方で「病」とは、疾患がもたらす生活のしづらさや苦しみ、さらには社会の中で生きるうえで直面する困難を意味している。つまり、同じ疾患を抱えていても、生活環境や人間関係によって「病」の形は大きく変わってくる。

これは私たちの就労支援にもそのまま当てはまる。統合失調症を発症した人が、精神疾患そのものだけでなく、社会の中で受ける差別や偏見によって「働きたくても働けない」という現実に直面することがある。結果として経済的に困窮し、生活が不安定になり、時には基本的人権すら守られない状況に追い込まれてしまう。

私たちが担う就労支援は、単に「仕事を斡旋するサービス」ではない。働くことは人の生活の一部であり、同時に人生に深く関わる営みである。そのため、疾患だけを見て支援していても、本当の意味での解決にはつながらない。その人が抱える生活全体の課題や想いを理解し、「まるっと」その人の人生を支える視点を持つことが欠かせない。

就労支援とは、疾患に縛られた「病」を少しでも軽くし、その人が社会の一員として自分らしく生きられるように伴走する営みなのだといえる。

 

2025年8月22日

相手から学ぶ(金塚さんがこうやれって言ったんやろ)

精神障害のある方の就労支援を始めて間もない頃の出来事。ちょうど、いくつかの支援がうまくいき“いける”という手応えが出てきた直後だった。自分でもはりきっていてやり方を工夫して先へ進めていた。そんな時にある男性当事者が私に向かって強い口調でこう言った。

「金塚さんがこうやれって言ったんやろう!」

その声を聞いた瞬間、顔に血が上っていくのがわかった。頭の中で言葉がぐるぐる回り、反論したい気持ちと裏腹に言葉が出てこなかった。

振り返れば、失敗の芽はすでにあった。連続した成功に気持ちが引っ張られ、本人の意向や不安を十分に確認しないまま計画を前へ進めてしまった。面談で受け取った表現を「こういう意味だろう」と早合点し、企業実習の現場で必要なフォローや配慮を詰め切れていなかった。その結果、実習先で小さな摩擦が積み重なり、本人のストレスは一気に噴き出してしまった。「あなたのやり方が悪かった」という怒りと失望をぶつけられた瞬間は忘れられない。

あのとき受けた言葉は痛かった。自分の未熟さを突きつけられたようで。けれど同時に、「何が足りなかったのか」を冷静に見るきっかけにもなった。表面的な手順や成功体験に頼るのではなく、本人の声をひとつひとつ確認すること、支援計画は常に本人の意思を軸に据えることの大切さをノウハウ本ではなく身をもって学んだ。

この経験で得たのは、テクニックだけではない。支援は人と人との信頼関係であり、相手の声を確実に受け止める謙虚さが不可欠だということ。あの短い一言「金塚さんがこうやれって言ったんやろう」は、私にとって戒めであり支援の再出発点でもあった。

2025年8月17日

人見知り

「距離感がおかしいって言われることがある」と言うと、だいたいの人は「え、そんなことないよ〜」とフォローしてくれる。でも内心、「……ちょっと思ってたけど」って顔してるのがわかるんですよね。

「人見知りスイッチ」ONになると、人に対して壁を作る事があるんです。その壁はエベレスト級。話しかけられても「え? それ私に言ってます?」ってくらいの反応をしたり、その場所を急に離れたり。なので最初は愛想ゼロ。むしろマイナス。時にスタッフに迷惑をかけたりします。

ところがその人に「興味スイッチ」が入ると一変。こっちから急に距離を詰めに行きます。高い壁が急激に崩れます。「昨日まで無表情だった人が、今日、急に飲みに誘ってくるなんてどういうこと!?」って思われても仕方ない。

このギャップ、きっと私の中では自然なんです。でも、周りからすると「え、さっきまで氷の女王だったのに、急に猫なで声?」みたいな戸惑いがあるらしく、「距離感おかしいですよね」って言われること数回。これは私なりの「好き」の表現なんです。不器用なだけで悪気はないんですたぶん。

仕事の時は出来るだけ「人見知りスイッチ」はOFFにしているつもりですが・・・

2025年8月11日

相手から学ぶ(支援はプレゼント・タイミング)

支援とは単なる「おせっかい」ではない。それは相手の状況や気持ちに寄り添い、そっと差し出す「プレゼント」のようなもの。そしてその価値を決めるのは「タイミング」であると思う。

就職した当事者と話していた時のこと。彼がこんなことを言っていた。

「支援者の言ってることは頭ではわかるんです。でも、タイミングってもんがあるじゃないですか。正論でもこっちが受け取れる状態じゃなかったら意味ないんですよ」

まさに!私は聞き返した。

「そのタイミングって、どうやったら分かるんやろ?」

すると、彼は私を見て一言。

「僕らのこと、ちゃんと見てたら分かるでしょ!!」

私より彼のほうが、よっぽど支援者なのでは?って思った。

彼の話を聞いて2つの事を思い出した。一つはJSNに通所していた気分障害の男性が、調子よく通所していると思ってたら突然、休むって事がありました。その報告に対して初代理事長の田川先生から「その人の事をしっかりと見ていたら、なにか兆候があったはずだ」と。

もう一つは、昔、好きな女性の気を引こうと、彼女の趣味や好きなタイプを友人から聞き、デートのときに「かわいい」と言っていた小物をプレゼントしたあのときのこと。タイミングがバッチリ合って大成功!……その後どうなったかは聞かないでください。

支援もまさに同じです。どれだけ素晴らしい内容でも、「いま」必要とされていなければ、ただの独り言に終わってしまうかもしれません。だからこそ、相手の変化や心の声に敏感であること。それこそが、真の支援者の条件のひとつではないでしょうか。

2025年8月2日

若手だったはずのような

会議や研修などで人が集まると、ふと気づく。「あれ?この中で一番年上って、もしかして私?」と、そんな現象が時々、いや、最近はもはやほぼ毎回起きるようになった。

ついこないだまでは「若手やな」とか、「まだまだわかいな」と言われていたような気がする。記憶は美化されがちなんで()
なのに今では、何かというと「最近の若い人は〜」やら「Z世代って」と語り出す自分がいる。
どうやら、自分がかつて分析される側から分析する側に回ったことに気づかず、いつの間にか世代交代していたらしい。

思い返せば自分が仕事を始めた頃は、まっすぐで青くて、時に突っ走って、先輩の忠告は聞こえたふりをしていた。
でもそんな自分を偉大なる先輩たちは見捨てず、根気よく、時には飲みに連れて行ってくれて育ててくれた。ありがたや、ありがたや。

さて、問題はここから。
果たして私は今の若手から見て「頼れる先輩」「あの人についていきたい」「ちょっとクセ強いけど、まあ嫌いじゃない」あたりのポジションをゲットできているのだろうか?

それとも
「あの人と話すのはかなわんなあ」とそんな警戒レベルの先輩になっていたりするのか。

いやいや、目指すはあこがれの事務局長。でもその前に、まずは飲みに連れってくれる事務局長“あたりから始めよう。

年齢はただの数字。どうせなら年上であることを面白がりながら、今日もZ世代とやらと、うまくやっていきましょうか!!

2025年7月27日

対人支援力をみがくセミナー

SPIS研究所主催の研修がスタートしました。今回の研修は「対人支援力をみがくセミナー」として「集合研修」「オンライン研修」「スーパービジョン(SV)」などを組み合わせ、来年3月まで続く長期プログラムとなっています。

1回目の研修は新大阪事業所にて集合研修として実施されました。参加者は、京都府にある「アステップむろまち(就労移行支援事業所)」、神奈川県の「ホープ大和(就労継続支援B型事業所)」、および「JSN」の各スタッフより、合計10名が受講しています。

今回の集合研修では「相手から学ぶ」というテーマで、私も少しお話をさせていただきました。対人援助の仕事を始めて利用者や企業、先輩、同僚、後輩、関係機関の人々から多くの学びを得た一部をみなさんに紹介させていただいた。

対人援助の基本である「聴く」について。医療機関で働いていたPSWから学んだ事。話を聞いてもらいたくても聞いてもらえない時期を過ごした人にとっては、無条件に話を受け入れる姿勢はその人の存在価値を認める行為に他ならない。私たちの仕事のスタートは「聴く」から始まる。単に音を耳に入れるのではなく、相手の存在を尊重し受け止める事が「信頼関係の第1歩」になる。そしてより「当事者を知る」ことで「本当に必要とされている支援」が見えてきて支援の質が向上する。そして語る事は気持ちを整理できる機会になり、人によっては心の荷物を下ろす事になり「元気を取り戻す」事につながっていく。

学びを得たこと、このセミナーの動きについて紹介をしていきたい!!

2025年7月17日

伝達

あるスタッフと話をしていて、改めて感じたことがある。私がこれまでに経験してきたことや、そこで得た知識・気づきを十分にスタッフに伝えきれていない、あるいはうまく伝わっていないという現実。

現場での経験や試行錯誤の中から多くの学びを得てきたが、それを周囲と共有し、次の世代に繋いでいくことを重要な役割のひとつだと感じているこの頃。単に「知識」を持っているだけでは意味がなく、それを伝え実践を積む中で「知恵」に代わり、スタッフの自信にも繋がるはず。

また、「同じことを言っている」と思われることを恐れて、何度も同じ話をすることを避けてしまう自分がいた。話したことを忘れていて何度も話してしまう事はよくあるが 笑 。しかし、伝えるという行為は一度で完結するものではない。聞く側の理解度や状況によって受け取り方は変わる。だからこそ繰り返し伝えることにも意味があるし、時には形を変えてでも伝え続ける事が大切なのだと思う。

これからは自分の中にある経験や想いを、しっかりと言葉にして届けていく努力をしていきたい。伝えることは未来へつながる事と信じて。

2025年7月9日

ジョブコーチ(JC)

やっちゃいました!!先日、ジョブコーチ(JC)養成講習で「障害特性と職業的課題(精神障害者)」について講義を担当しました。持ち時間はたっぷり80のはずが、なぜか自分の中で終了時間を勘違いしていて、終盤はかなり急ぎ足になり60分で終了

「ちょっと時間オーバーしましたが、ここで終わります!」と爽やかに締めたその瞬間、事務局の方が慌てた様子を見て、なんと!終了時間を20分も早く設定していたことが判明。

急きょ、質問タイムを活用して端折った部分をもう一度丁寧に説明。なんとか無事に帳尻を合わせて、今度こそちゃんと終了できました。実は手元の紙に「終了時間」が書いてあったんですよね 思い込みって本当に怖い。

JSNには専属のJCを「地域・企業連携事業部」に3名配置し、障害者の就労定着支援に力を入れています。

この事業部では、法人利用者のJC対応はもちろんのこと、地域に暮らす障害のある方々が安心して働き続けられるよう、数年前より地域支援に特化したJCを専属で配置しています。

全国にはおよそ3000か所もの就労移行支援事業所がありますが、そのうち就労定着支援まで行っている事業所は、移行支援事業所のわずか約半数にとどまっています。多くの支援機関が「就職」までのサポートにとどまり、「就職後の定着支援」までは十分に対応できていないのが現状です。

障害者就業・生活支援センターの報告などからも、企業や当事者から定着支援へのニーズが高まっていることが分かります。特に、障害者を初めて雇用する企業や、障害者雇用の経験が浅い企業にとっては、不安や戸惑いが大きく、サポートを必要とする場面が少なくありません。

地域・企業連携事業部のJCは、こうした不安を解消し、企業と当事者双方にとって安心できる職場環境を整えることを目的に活動しています。支援者にとっても、現場でのサポートの手が増えることで、より充実した支援が可能になります。

この支援があって良かった」と思っていただけるように!」
ぜひ、地域・企業連携事業部のJCをご活用ください。