挑戦!
約5年前。
長野県松本地域の、トトロが出てきそうな山あいの場所で、一人の“ズブの素人”が農業を始めた。
周りからは
「こんな山の中で何ができるねん」
「農業は甘くない」
「まして障害のある人と一緒なんて無理やろ」
そんな声も少なくなかったそうだ。
当時、50過ぎのおっちゃん(私と同い年)が、「働けることを証明したい」という思いだけを握りしめて動き出した。
最初に目の前にあったのは“畑”とは呼べない場所。
草は腰の高さまで伸び、石ころだらけ。
「ここ、ほんまに作物できるん?」と思うような荒れ地だったらしい。
そこから毎日、コツコツ草を刈り、土を耕し、肥料を学び、天気とにらめっこしながら、「長ネギってどう育つんや…」と失敗しては学び、また挑戦。
農業経験ゼロ、知識ゼロ。まさに“農業版・はじめてのおつかい”状態(笑)。
でも、その積み重ねが少しずつ景色を変えてきたようで、今では、一町歩を超える広大な畑に、まっすぐ綺麗に並ぶ長ネギ。
夏には色鮮やかなピーマン。
「ここ昔、荒れ地やってんで」と言われても信じられないほどの風景。
しかも、就労継続B型事業所として、工賃は4万円超。
「B型やから難しい」「農業やから安い」ではなく、“ちゃんと働いて、ちゃんと対価を得る”を形にしている。
さらに最近では、新しい挑戦として“ビーツ”の栽培にもチャレンジ。
そして、何より印象的なのは地域との関係です。
最初は、正直なところ、あまり相手にされなかった。
「どうせ続かへんやろ」
そんな目で見られることもあったそうです。
けれど、毎日畑に立ち続け、丁寧に作物を育て、人と向き合う中で、少しずつ地域との距離が変わっていったそう。
今では、「支える側」「支えられる側」という関係を超えて、地域の一員として認められ、地域の会議にも参加する存在に。
畑を耕していたつもりが、いつの間にか“地域とのつながり”まで耕していたのかも。
事業は畑だけではなく、養鶏場とも連携し、卵の収穫や磨き作業も行っている。
さらに、事業所内ではシードペーパー作りにも取り組んでいる。
紙を使い終わったあと、土に埋めると花や植物が育つ“命がつながる紙”。
なんだか、この事業所そのものを表しているよう。
「無理や」と言われた場所で、「できる」を増やしていく。
荒れ地だった土地が豊かな畑になったように、人もまた、関わりと挑戦の中で変わっていく。
そんなことを、山あいの畑が静かに教えてくれている気がした。
現場を目の当たりにして、同い年のおっちゃんの挑戦に大いに刺激を受けた。
