2026年8月29日
失敗できるのは人間だけ
あるドラマのセリフ「完璧さは、ときに傷ついた人を息苦しくさせる」を聞いて、ある人との話を思い出した。
「前を向こう」「いつまでも落ち込んでいてはいけない」「失敗を糧にして、次へ進もう」
こんな言葉は、元気なときには「よし!」と思えるが、傷ついている人にとって、正論は苦しくなる。
生物として考えてみれば、失敗できるということ自体が、人間の大きな特権なのかもしれない。
野生の動物にとって、失敗はしばしば生死に直結する。狩りに失敗すれば食べられない。逃げることに失敗すれば食べられる。
そこには、「今日はうまくいかなかったな」と落ち込んで、何日もじっとしている余裕なんてない。
生きるか、死ぬか。
泣くことができる。
落ち込むことができる。
何もしたくない日を過ごすことができる。
過去を何度も思い返して、「あのとき、こうすればよかった」と後悔することもできる。
人間には「失敗したまま生きる時間」が許されているのだと思う。
だから、簡単に乗り越えなくていい。
傷ついたばかりなのに、無理に前向きにならなくていい。
失敗した直後に、その意味を見つけなくてもいい。
この経験があったから成長できたと、きれいな物語にまとめなくてもいい。
前を向くというのは、必ずしも立ち上がって走り出すことではない。
誰かに「おはよう」と言うこと。
ご飯を食べること。
眠ること。
それも全部、前を向くことなのだと思う。
前向きになるというのは、過去をなかったことにすることではない。
傷を抱えたまま、それでも少しずつ自分の人生に戻っていくこと。
それが、本当の意味で「前を向く」ということなのかもしれない。
