JSN金塚事務局長のわくわくワーク JSN金塚事務局長のわくわくワーク
2025年9月29日

合理的配慮

地域精神保健福祉機構・コンボが発行している「こころの元気+」の9月号「合理的配慮って何」 特集7「配慮と差別の違いや線引き」というテーマで執筆させてもらった。2025年9月号 合理的配慮って何?(223号)電子版 | COMHBO地域精神保健福祉機構

合理的配慮という考え方が法に明文化されてから、すでに10年近い年月が経った。その間、障害者雇用においては多くの企業が制度や仕組みを整え、働きやすい環境づくりに取り組んでこられた。実際に、勤務時間の柔軟化や職場環境の調整、ITツールの導入など、目に見える形で合理的配慮が進んできたことは大きな前進といえます。

しかしながら、一方で「配慮はするけれど、その後は本人の努力に任せる」という姿勢にとどまってしまっている企業も少なくないと感じている。確かに配慮は必要不可欠であるが、それだけでは従業員一人ひとりの能力を十分に引き出すことは難しく、組織にとっての「戦力化」にはつながりにくいはず。

その人の特性を生かし、プロになる為にコーチングする必要があります。その為には管理職のマネージメント能力が従業員の成長に大きく左右する。

仕事の負担軽減だけではなく、力を発揮でき環境であり、チーム全体でサポートしあう文化を育てる事が必要。役割と責任を明確にし、評価するしくみが従業員の成長とやりがいにつながる事になる。

合理的配慮を「入り口」として、そこからさらに「活躍の場」を広げていくことが、これからの組織に求められる課題だと思う。

2025年9月21日

言葉

京都大学白眉センターの鈴木俊貴 特定助教がシジュウカラの鳴き声を長年にわたり研究した結果、20以上の単語を用い、それらを組み合わせて意思伝達していることを発見しらしい。これは「動物が言葉を話している」ことを証明した世界初の研究であるらしいと雑誌で取り上げられていた。

「動物言語学」という新しい分野で、特に日本の野鳥・シジュウカラを対象に「動物は言葉を持つのか」を研究してきたらしい。 シジュウカラは鳴き声(単語)を使い分けているらしい

 「ピーツピーツ」=タカなど空からの脅威を発見した合図
 「ジャッジャッ」=ヘビや哺乳類など地上の脅威を発見した合図
 「チチッ」=仲間を呼ぶ合図
 「ヒーヒー」=仲間を集めて行動する合図

 シジュウカラは単語を並べ替えることで意味を変えることもできるらしい。

「ピーツピーツ」+「チチッ」=「空の敵がいるから仲間を呼べ」
 逆に順番を入れ替えて「チチッ」+「ピーツピーツ」とすると、仲間は反応を示さないらしく、単語の順序によって意味が変わる=文法のような構造があることがわかったらしい。

人間界には多様な言葉がある。言葉は単なる「情報の伝達手段」だけでなく、人間は漠然とした感覚や感情を明確に表現したりする。喜びや悲しみを伝え合い、協力したり共感したりできるのは、言葉の力のおかげである。しかし、同じ言葉でも解釈の違いから衝突につながる事もあるし、真実を隠して事実とは違う事を伝える事も出来る。言葉の選び方、伝え方で人間に豊かな生活を送る事が可能になるが、一方で誤解や対立の原因になる「諸刃の剣」である。

2025年9月15日

相手から学ぶ(人が育つ環境・人を育てる環境)

30代の初め頃、障害者雇用に取り組んでいる中小企業の社長と、ある集まりのあと一献交える事になった。というか当時はその社長と対峙して飲むなんて・・・怖くて、怖くて、いつも社長の席から離れた席に座っていた。

お酒が進み少し酔いが回ってきたとき、社長がふいに「なぁ金塚、人が育つ環境、育てる環境って、どんな環境かわかるか?」「……」頭の中で答えを探すが、明確な言葉が出てこない。

社長は一刀両断「そんなこともわからんと、就労支援やっとるんか!」

振り返れば、その頃の私は「直接支援」にばかり目を向けていた。目の前の人への関わりや助言は懸命にやっていたが、「環境づくり」という間接的な支援について、深く考えたことがなかったのかもしれない。

その夜を境に、私の支援の視点は大きく変わったと思う。
職場のルール作り、育成プログラム、評価制度、フィードバックの方法。そうした「人を取り巻く環境」こそが、成長を促すきっかけになると。

今では、企業の人と話す機会があれば「育つ環境、育てる環境」をどう思いますか?と投げかけている。「一緒に汗を流すことの大切さ」「現場の声を反映したルール作り」「人に合わせた配慮の仕組み」企業によって考え方はさまざまだが、その一つひとつに学びがある。

気がつけば、それは私にとって視野を広げる貴重な時間であり、同時にとても楽しい時間でもある。あの夜、社長に投げかけられた一言は、今も支援者としての私の中に深く根を下ろしている。

「人」という「環境」に触れて変化した自分。まだまだ刺激ある「人」に出会っていきたい。

ちなみに今では怖い社長とは2人で定期的に飲みに行っている。飲みすぎて記憶が飛んでいる事も多い() しかし、よく飲み、よくしゃべり、よく笑いで楽しみの場になっている!!

 

2025年9月8日

相手から学ぶ(理解してくれるかもしれない)

「月に23万円くらいもらえればいいんです。」
シュウポツ時代のエピソード。新しく相談に訪れた20歳そこそこの若い男性に「お給料はいくらくらい欲しいですか?」と尋ねたとき返ってきた答えだった。

正直、二十歳で月に2万円?生活はどうするのだろうか。違和感を覚えたがその場では深く追及せず、相談を重ねながら関係を築いていった。彼はやがて企業実習に参加することになった。

実習が始まってしばらく経ったある日、休憩時間に彼がぽつりと話し出した。
「今まで就職しても、なかなか長続きしなかったんです。そのたびに、お母さんがとても落ち込んで。それを見るのが本当に辛くて。だから、せめて月に23万円くらいの負担で済む仕事なら、無理せず続けられるんじゃないかって思ったんです。」

その言葉に、胸の奥が熱くなった。
本当は彼だって、もっとお給料が欲しい。欲しい物だって、やりたいことだって、きっとたくさんある。それでも、「辞めて母親を悲しませるくらいなら」と、自分の望みを小さく見せていたのだ。

そのとき改めて気づかされた。私たちの前に来る人は、最初からすべてを打ち明けるわけではない。信頼が生まれた瞬間、初めて心の奥底にある本音や悩みが顔を出す。こちらが相手を理解するのではなく、相手が「理解してくれるかもしれない」と思える存在になること。それが支援の出発点なのだと。