2025年9月8日
相手から学ぶ(理解してくれるかもしれない)
「月に2、3万円くらいもらえればいいんです。」
シュウポツ時代のエピソード。新しく相談に訪れた20歳そこそこの若い男性に「お給料はいくらくらい欲しいですか?」と尋ねたとき返ってきた答えだった。
正直、二十歳で月に2万円?生活はどうするのだろうか。違和感を覚えたがその場では深く追及せず、相談を重ねながら関係を築いていった。彼はやがて企業実習に参加することになった。
実習が始まってしばらく経ったある日、休憩時間に彼がぽつりと話し出した。
「今まで就職しても、なかなか長続きしなかったんです。そのたびに、お母さんがとても落ち込んで…。それを見るのが本当に辛くて…。だから、せめて月に2、3万円くらいの負担で済む仕事なら、無理せず続けられるんじゃないかって思ったんです。」
その言葉に、胸の奥が熱くなった。
本当は彼だって、もっとお給料が欲しい。欲しい物だって、やりたいことだって、きっとたくさんある。それでも、「辞めて母親を悲しませるくらいなら」と、自分の望みを小さく見せていたのだ。
そのとき改めて気づかされた。私たちの前に来る人は、最初からすべてを打ち明けるわけではない。信頼が生まれた瞬間、初めて心の奥底にある本音や悩みが顔を出す。こちらが相手を理解するのではなく、相手が「理解してくれるかもしれない」と思える存在になること。それが支援の出発点なのだと。