JSN金塚事務局長のわくわくワーク JSN金塚事務局長のわくわくワーク
2025年8月22日

相手から学ぶ(金塚さんがこうやれって言ったんやろ)

精神障害のある方の就労支援を始めて間もない頃の出来事。ちょうど、いくつかの支援がうまくいき“いける”という手応えが出てきた直後だった。自分でもはりきっていてやり方を工夫して先へ進めていた。そんな時にある男性当事者が私に向かって強い口調でこう言った。

「金塚さんがこうやれって言ったんやろう!」

その声を聞いた瞬間、顔に血が上っていくのがわかった。頭の中で言葉がぐるぐる回り、反論したい気持ちと裏腹に言葉が出てこなかった。

振り返れば、失敗の芽はすでにあった。連続した成功に気持ちが引っ張られ、本人の意向や不安を十分に確認しないまま計画を前へ進めてしまった。面談で受け取った表現を「こういう意味だろう」と早合点し、企業実習の現場で必要なフォローや配慮を詰め切れていなかった。その結果、実習先で小さな摩擦が積み重なり、本人のストレスは一気に噴き出してしまった。「あなたのやり方が悪かった」という怒りと失望をぶつけられた瞬間は忘れられない。

あのとき受けた言葉は痛かった。自分の未熟さを突きつけられたようで。けれど同時に、「何が足りなかったのか」を冷静に見るきっかけにもなった。表面的な手順や成功体験に頼るのではなく、本人の声をひとつひとつ確認すること、支援計画は常に本人の意思を軸に据えることの大切さをノウハウ本ではなく身をもって学んだ。

この経験で得たのは、テクニックだけではない。支援は人と人との信頼関係であり、相手の声を確実に受け止める謙虚さが不可欠だということ。あの短い一言「金塚さんがこうやれって言ったんやろう」は、私にとって戒めであり支援の再出発点でもあった。